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あれは晴れたとある休日のこと。僕は友人数人とドライブに出かけた。目的地は特になかったが、とりあえず、都会を離れ海の幸でも食べられるところに、という話になった。
高速に乗ると、ほどなくして渋滞に巻き込まれる。まったく車が動かない。せっかく都会を離れてゆっくりしようと思ったのに、これじゃあ逆に疲れに行くようなもんだ。やはり休日のドライブなどするもんじゃない、家で寝ていればよかった。僕は次第にそんな憂鬱な気分になっていった。
その時だった。
ふと、車内から外を眺めた。横には僕らと同じく渋滞で動けずにいる車があった。そしてその車内に―
「…!」
僕はその光景を一度では飲み込むことが出来ず、一端正面を見直した。
「落ち着け、落ち着け、落ち着け。」
気持ちを落ち着かせ、もう一度横の車の中に目をやる。
「これは現実だ―」
夢でもなんでもなかった。僕の眼前に広がる光景はまぎれもない現実であった。
まぎれもなく、その車のおっさんは、恍惚の表情で、その太い、そして長いブツを口に咥え、体を上下させていた。そして、その車の中におっさん以外の人間はいない。つまり彼は車内に一人。貴方にはこの意味が分かるだろうか。
そんなことあるわけがない。ここは日本、法治国家の公道だ。なぜ高速道路でそんな行為に及ぶんだ。なにがお前をそうさせたんだ。車が動き出したらどうするんだ。そして、なんでそんなに気持ち良さそうなんだ。
様々な言葉と感情が僕の中で交差する。すぐに僕らの車線は動き出し、隣の車は後方へと遠ざかっていく。あれは本当に現実だったのか、それともこの世界とは“異”なる事象を僕は覗き見してしまったのか。いや、でもそれは確かに在った。僕は確かに見た。
渋滞の暇つぶしにノリノリで縦笛を吹いていたおじさんを。
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かつて、ある一人の天才作家がいた。名前はジュール・ヴェルヌ。数多くのSF作品を世に出し、始めは彼の頭の中だけにあったはずそれらの事柄は、彼の才能と、その後の歴史の積み重ねにより、もはや現実と言っても過言でない世界へと昇華した。近い将来、我々人類は本当に、遥か深い海底や地底の世界を旅することなるだろう。その時、想像は現実となる。
彼は次のような言葉を残している。
「人が想像できることは必ず人が実現できる。」
と。
彼が死に、おおよそ100年が経った今。僕が彼の言葉に新たな歴史を刻むとしよう。
「人が想像できることは必ず人が実現できる。だが、本当に実現するかどうかは別だ。」
そりゃあ、アンタは三度の飯より縦笛が好きなのかもしれない。渋滞の暇つぶしに吹こうと想像したのかもしれない。誰にも迷惑かけないから実現は容易いのかもしれない。でも本当にやっちゃダメだ。見た人がびっくりする。そんなに好きなら、ずっと家で吹いてて下さい。わざわざ出かけないで。
でも…、
でもその情熱は…天晴れだ…!!
【追記】
縦笛ってなんかちょっとマヌケだよね。ラッパとかってカッコイイのに、なんであの縦笛・リコーダーってやつはマヌケに見えてしまうんだろう。学生の時に無理矢理やらされてさ。基本、「好きな女子の縦笛を盗む」って以外であやつが話題に上ることってないような気がするなぁ。