別れの時が来た。
ここは十勝の屋台村。僕はビールを片手に、隣にはおっさんがいた。夕方から飲み出し、気がつくと日もとっぷりと暮れていた。
昨晩、五右衛門風呂で釜茹でにされた後、僕はずっと星を眺めていた。色々と考えた。自分のこと、大切な人のこと、仕事のこと…。
十勝では3日間を過ごした。初日の乗馬体験以外は基本的に何もしていない。いや、あえて言うなら、「なにもしない」をした。
ひたすらにゆっくりとした時間が流れる中、ふと、目の前がぱっと開けたような瞬間があった。存在する様々な悩み事が、とても小さいもののように感じた瞬間だった。
おっさんは、さっきからビールをガブガブ飲んでいる。その中でふと、彼の過去について話が及んだ。彼は昔、世間では一流呼ばれる会社のサラリーマンだったという。今、北海道にいる理由は教えてくれなかった。が、僕にはなんとなく分かった。きっと、彼にも僕と同じ様な瞬間があったのだ。
「まだ若いんだから、好きなことやればいいんだよー」
とおっさんは僕に言う。
僕にはおそらく彼ほどの勇気はない。少なくとも今は。
だからただ、
「ありがとうございます。」と言った。
何か、
それは靄にかかって見えないが、
自分がこれから生きてく上でとても大切なもの、
そのカケラをおっさんと北海道からもらえた。だから、ありがとう。
いつの間にか、おっさんの酒は焼酎に変わっていた。
いつの間にか、会話は下ネタになっていた。
僕は手元にあったビールを飲み干すと、とっておきのお下劣話を披露した。十勝の大空と大地に、二人の笑い声がこだまする。そこには何もなく、しかし全てが自然と共にあった。
チキチキ旅行記・2006夏〜空と大地と僕とおっさん〜 完
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番外編へと続く。