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その部屋にひとつだけある“違和感”にはすぐに気がついた。A子らしい落ち着いた部屋には似つかわしくない“それ”に、先輩は背筋にうすら寒いものが走るのを感じた。
程なくして皆で酒を飲み始める。
「あははは、こいつは今でこそ落ち着いた感じだけど、昔はそりゃあもうひどい奴でさぁ!」
Aはそのような感覚とは無縁な男であったので、終始いつもの調子ではしゃいでいる。Aに乗せられてか、酒のせいか、時間が経つにつれ、最初に感じた“違和感”も次第に希薄なものとなっていった。
「うるさいなー、Aに言われたくないよ!」
「いやぁ、昔は二人でよくケンカとかもしてさ、ほらあのキックボクサーとやったときの話!」
「えー?キックボクサーですか!?ひょとしてMさん(先輩)って昔はワルかったんですかー??」
AとA子よりも、AとB子の方が調子が合っている気がする。
(いや、むしろわざとか…)
先輩はAがなぜこの宴に自分を誘ったのかを察した。
(悪いがタイプじゃないよ…。俺はむしろ…)
他愛のない会話が続く。騒ぐAとB子をよそに、A子はときおり微笑みを浮かべるだけであったが、少し赤らんだその表情は実に魅力的に見えた。
どれくらい時間が経っただろうか―
いつの間にか眠っていたようだ。結局自分もかなり飲んでしまった。横ではAが寝ている。A子は自分のベッドにいるようだ。B子は…
「!」
暗がりの中に人影が見えた。ひとり鎮座し、顔は上を向いている。B子だ。
(なんだ、まだ寝てないのか…。)
「B子ちゃん、まだ起きてるの?」
反応が無い。
「B子ちゃ…」
B子の顔を覗き込む。まるで生気が無い。そしてあることに気がつく。B子が虚ろな視線の先にあるもの。そう、この部屋に入ってきた瞬間に感じた“違和感”―
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」B子が倒れた。
「!! ちょっと、おい!B子ちゃん!!!」
次の瞬間、
何者かが先輩の両の足を掴み、
先輩の体は激しく外に投げ出された―つづく
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