まさかの展開に、泣きながら手を洗う僕。
「落ちねぇよ、落ちねぇよ! うぐっ、ひっくっ。」
サスペンス系のドラマなどで、「殺人を犯した容疑者が必死に手についた血を洗う」というシーンがよくあるが、まさにそんな感じである。
…んまあ、今回の場合、ついているのは 血、ではなく うんこ、なのであるが、この際は良しとしようか。なにしろ時間がない。
全速力で最寄の地下鉄に駆け込み、羽田空港へと向かう。
地下鉄は朝のラッシュで、大きなリュックを背負った僕は、完全に異物…邪魔者である。サラリーマン達は、一様にイラ立ちを含んだ目でこっちを見ている。
―ガキが、浮かれやがって。こっちはこれから仕事だってのによ!
そんな心の声が、今にも聞こえてきそうだ。
悪いが、
僕はまったく浮かれてなどいない。状況は切羽つまっており、なにより、「生まれてはじめて犬の糞を踏んだ」ことは、時間を経るにつれ、重い事実として大いに僕を苦しめた。
うんこ男。僕は一生、その十字架を背負って生きていかなくてはならないのだ。
もし、
僕が、
成功し、億万長者(チリエモン)になり、
女優(奥菜恵)を嫁に向かえ、
可愛い子供(ストレートヘアー)に恵まれ、
そして、まさに死せるとき、
傍らには、いつか袂を分かった仇敵も、その臨終のときに駆けつけ、
「いい、人生だった―」
と、薄れゆく意識の中、病院の天井を眺めてるとき、
思い出すのだ。
あ 、 で も 、 う ん こ ふ ん だ しこれは、どうにも曲げようもない事実なのだ。いかんともしがたい事実なのだ。美川憲一は芸能界の事情通なのだ。事実なのだ。
…
北海道はどこへ行った?いけない。三話目にも関わらず、未だ東京を出ていないという愚行だ。
このままでは、
「おお、あれか、またいつもの、例の、妄想の漆塗りか、あれだろ、実は北海道なんて行ってなくて、家で、てめぇのジャイアントコーン片手に、一人知床半島な日々を過ごしていたんだろ?」
ということになってしまう。
それは違う。断じて違う。
僕は、ジャイアントコーンなんかではないし、1人知床半島に関してはもはや意味不明だ。誰だ、世界遺産にしようなんて言った、素敵な紳士淑女の皆様は。
…
…
そんな憂鬱を乗せても、地下鉄は進む。おおよそ1時間で羽田空港へ。(途中、あまりの混雑に、見知らぬサラリーマンの靴を1、2度踏んでしまったが、それはまさに、「ウン」が悪かったとして諦めてもらうより他はないだろう。)
「間に合った…!」
僕は、空港の売店で祝杯のビールを買うと、小気味よく缶を空け、それを一気に飲み干した。
いざ北海道へ。
僕は、意気揚々と機内へとその足を運んだ。

スッチーはハズレだった。トーテムポールみたいな人だった。
その確認が済むと、僕は惜しげもなく眠りについた。
つづく
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すいません、次は北海道です。
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