怖い思いをした。

通勤の電車内でのこと。

車内アナウンス−「お客様がホームに落下された為、一時電車の運行をストップします。」

ここまでは良くある話。「ああ、会社遅れちゃうよー。」ぐらいのことしか思わなかった。

しかし程なくして、『電車を降り、最寄り駅のホームまで歩いて下さい。』というアナウンスが流れる。

地下鉄の線路内を歩く。閉塞感、圧迫感、そして闇。

なんだこの恐怖は。

僕はこういう事態には比較的冷静にいられる方だ。その時も表面上は冷静を保っていた。

しかし心の奥底には絶対的な恐怖が潜んでるのも感じていた。

なぜそんなに怖いのか。

死だ。

僕はそこに死というものを感じたのだ。

普段、死について頭で考えてはいても、体で実際に感じることはない。

電車の事故、おそらく飛び込み。そしてこの闇。

日常は一瞬で非日常に変わる。生のすぐ隣に死はある。

僕はあの時、そんなことを直感的に感じたのだと思う。



ホームには仰々しいビニールシートが張られていた。先程の体験を嬉々として話すOL。携帯電話で写真を取る高校生。何事もなかったかのように早足で歩くサラリーマン。

感情の死。

僕はまた恐怖を感じずにはいられなかった。


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