うちのおかん。

うちのおかんは世間知らずで天然ボケだ。




クイズ番組の「8月を英語で言うと?」という問題。選択肢は「1、June 2、August 3、December 4、March」。 

おかんは自信満々に「summer!」と答えた。




ボスのCMの外人さん、トミーリー・ジョーンズ。つい最近までロッテのバレンタイン監督だと勘違いしていた。「忙しいのによくCMに出れるわねー、って思っていたのよー。バレンタインさんじゃないのねー、なら大丈夫ねー。」 

トミーリー・ジョーンズだって忙しいことには、まだ気付いてないようだ。





料理番組を見ると必ずレシピをつける。でも必ずひとつは材料や調味料を書き忘れる。何かが足りない我が家の新メニュー、大抵は1回食卓に出て、お蔵入り。

久々に成功作が出来た。どうやら書き忘れたのは「料理名」だったらしい。




小さい頃、鍵っ子だった僕。家に帰ると置手紙があった。「仕事で遅くなります。冷蔵庫にドリルがあるから、温めて食べて下さい。」 

ドリアだった。








うちのおかん。

うちのおかんは世間知らずで天然ボケだ。




なぜって、根っからのお嬢様だから。メイドのいる家で育った。でも、25の時に嫁入りしたのは、その家の半分にも満たない貧乏長屋だった。お嬢様で、世間知らずで、遊び一つ知らない彼女は、子供を育てることに全ての時間を費やした。初めて料理をして、初めて働いて、あの頃よりちょっと太って、白魚のようだったという手はすっかりおかんの手になって。


そう、世間知らずで天然ボケは、僕の知る数少ない彼女の昔の面影であった。
















生まれてはじめて、おかんをデートに誘った。





ちょっと高級なレストラン。ちょっとビビる僕。












ちょっと太めなおかんの手。



その手は実にしなやかに、実に洗練された振る舞いで食事を口に運んでいた。















またデートに誘おう。僕の知らない面影を見るために。







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