忌々しきかな、東京湾花火大会。





――その日、僕はバイトでした。ステーキ屋さんのバイト。




東京湾花火大会



あれの影響で、その日は店が死ぬほど混雑。花火帰りの浮かれたお客様ども、お越し頂き本当にありがとうございました。


世のカップル様どもは、花火を見てロマンチックになって、お肉を食べてスタミナをつけて、あとはもうニャンニャンを残すのみのようです。全員死ねばいいのにな。



で、


僕はニャンニャンを控えたカップル様どもに、死んだ魚の目をしながら、それはもう誠心誠意の接客を行っていたわけですが、





そんな中、





ひとり、





ひとり、泥酔状態で、ステーキを召し上がっている女性のお客様がいらっしゃいました。



お歳は26、7でしょうか。スーツ姿、小太りで、髪はストレートのロングです。



なにやら恨めしそうな目で、周りのカップルを眺めながら、もりもりと大盛りライスにステーキを召し上がっております。




「ああ、なんかいいな。アナタも、僕も、同じアナルのムジナだね。」



と、僕は、なんだか、この“わけあり”な女に、なんだか、とても良いものを感じてしまい、




「もう一杯!」



と、この上品なステーキ屋さんを場末の飲み屋かなんかと勘違いなさってるご様子の、この…“26歳OL・趣味は岩盤浴と自分探し”な女に、なんだか、とても良いものを感じてしまい、




ついには、


頭を伏してぐっすりと眠りに入ってしまい、その長い髪の毛がステーキのソースまみれになってしまっている、この……“今日は部屋で一緒に花火を見ようって言ったじゃない。なのに、なぜ貴方は来ないの? 嗚呼、私達の愛は儚く消えた一瞬の打ち上げ花火だったのね”な女に、




なんだか、とても良いものを感じてしまい、






思わず、



一句、



歌ってしまいました。













 花 は 散 り



 
 た ま や と い う か



 
 で ぶ や か な




                                三代目・心の俳句













このお客さん、



結局、閉店まで爆睡。寝相が悪く、テーブルの上の爪楊枝を倒したせいで、顔が楊枝だらけになったまま、なにやら半ギレでお店を出て行きましたよ。







ありがとうございました。色んな意味で。






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久々のバイト話。お客様は神様です。ネタの。

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