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「2ダブリ大学生・ギリギリ就活奮闘記」



【あらすじ】2ダブリ大学生・「三代目」の就職活動記。急に思い立ったかのごとく就職活動を始めた三代目。前途多難の一歩を今踏み出した。



第一話 「そうだ、就活をしよう。」


第二話 「しゅうかつって何ですか?」 」




第三話




「まずは最初に。」






―2005年 10月11日 夜半過ぎ


三代目は、いつものようにアリータイムスのロックを喉元へと流し込んでいた。



「つまみはやっぱ明治ミルクチョコだな。」



コンビニで買える幸せ。ひどく安上がりな晩酌。窓を開け、外を眺める。いつもの様に空き缶を回収するホームレスの姿がそこにはあった。



せめて気分だけは―



BGMにはJAZZをかける。気分だけは「いい男」になれるからだ。


 














ガラ!











ガラガラ!!

 



ガラ、ガラガラガラガラ!!!








ガラララララ、ガラ、ガララ!!!!












空き缶の回収音が辺り一帯に響いた。JAZZの演奏はいとも容易く掻き消された。








お金を稼ぐって大変だ…




妙にシビアな現実感が三代目を包む。




「しゅうかつ…しごと…おかね…。」



ふと、机に目をやる。そこには昼間のガイダンスでもらってきた冊子があった。




「なになに? 就活をする上でまず最初にやらなければならないこと…」





まず最初にやらなければならないこと―





『リクナビへの登録』




(※リクナビ…学生が就活をする上でその手伝いをしてくれるサイトである。いわば、企業と学生の橋渡し役。)





「なるほどね…。」



そう言うと三代目は、ノートパソコンの電源をオンにした。少しばかり長い起動時間の間には、ウィスキーの2杯目を作った。



「じゃあ、登録っと…」



名前、生年月日、学校、あなたが仕事に求めるもの…様々な質問が三代目に浴びせられた。




仕事に求めるもの…







朝、仕事場に行くと満面の笑みで挨拶をしてくれる女性社員。


昼、社員食堂へ行くとおもむろに自分の隣に座る女性社員。


夜、会社を出ると「今日は用事あるの?」と言ってくる女性社員。












タイトなミニで、胸元の大きく開いた女性社員。














ここがオフィスにも関わらず上目遣いで誘惑をしてくる淫乱女性社員。















ああ、ダメ、こんなところで…! もし誰か来たら…!!













「…あ、リクナビのハズがいつの間にか動ナビを見てた。」



(※動ナビ…男性がエロ動画探す上でその手伝いをしてくれるサイトである。いわば、男性とエロの橋渡し役。)





パソコンなしに就職活動は不可能である。就活中、多くの時間をパソコンの前で過ごす。 「就活をしていたハズが、ネットサーフィンに。」―それが就活における、最も避けなければ事態であることに、このとき三代目が知る由もなかった。





  



ガラ、ガラガラガラガラ!!







無職―その足音がひたひたと三代目に迫っていた。




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「2ダブリ大学生・ギリギリ就活奮闘記」



【あらすじ】2ダブリ大学生・「三代目」の就職活動記。急に思い立ったかのごとく就職活動を始めた三代目。前途多難の一歩を今踏み出した。



第一話 「そうだ、就活をしよう。」




第二話




「しゅうかつって何ですか?」






―2005年 10月11日



三代目は困っていた。



衝動的に「就活ノート」なるものを作ってみたものの。何をもってそのノートを埋めていけばいいのかが、皆目検討がつかない。1週間経った今も、表紙以外は完全に白紙のままであった。



こいつも王家の墓に…。



王家の墓。それは三代目の部屋の押入れの中にある。そこには表紙のみ、よくて2、3ページほど書かれたままに用済みとなったノート達、その屍が累々と積み重なっていた。


貧乏性の彼は物を捨てられないようで、「いつかは使うときが来る」とのことで、ノートを捨てずにいるのであるが、そのノート達が再び日の目を見ることはなかった。黄色く変色し、干からびたその姿は、さながら古代エジプトの王達のミイラのようであった。



「いつかは復活の時を」



三代目がそう呟きかけた刹那、一通のメールが入る。







♪ ピ ロ ロ  こ ち ら ス ネ ー ク





当時、メタルギアというゲームにハマっていた彼のメールの着信音だ。まさか後にこれが、うっかりと企業説明会中に鳴ってしまうなど夢に思わず、この時は嬉々として携帯電話を手に取った。





「今日の就活ガイダンス行く?」





友人からであった。






「当たり前じゃん。」





三代目はそう返信すると、すぐさま家を出た。もちろん、数秒前まで就活ガイダンスの存在など彼の頭には入ってはいなかった。「当たり前じゃん」――何一つ当たり前ではなかった。



大学に着くと、ガイダンス会場には人が溢れかえっていた。どうやら知らぬは三代目ばかりであったようだ。



「俺を就職させない気だな。」



巧妙な大学側の隠蔽工作により、彼にだけ情報が入っていなかったようだ。大いなる陰謀を感じる。そう云えば先日も研究費を私的に流用した教授が捕まっていた。ろくでもない大学だ。



出る杭は打たれるのか…。



多少の憤りを感じつつもの。「まあ、それも仕方ないか。」、と彼は思った。昔からこういうことには慣れている。高校時代、担任の教師に嫌われて、卒業制作の指導を自分だけ抜かされたことがあった。


彼はいつも出る杭であった。授業中に熱中していたゲームボーイの「ドラクエモンスターズ」、彼以上に強い人類がこの世に果たして何人いるのだろうか? そう、皆、彼の才能が怖いのだ。






「だが甘い。」、大学は少しばかりスネークの情報網を舐めていたようだ。


後で痛い目に合わせてやろう。どうしてやろうか、誰もいない部室のクーラーを16度にしてやろうか、トイレでティッシュを3重にしてケツを拭いてやろうか―


うひひ、我ながら恐ろしいことが考え付くものだ。才能が怖い。大学も大きすぎる相手を敵にしてしまったな。夏前から大きく掲示板に貼り出されていた、などという言い訳には一切耳を貸さないぞ。うひひひひ。







――会場に入ると、スーツ姿でやけにミニスカートの女が甲高い声でなにやらしゃべっていた。


自己分析、企業研究、OB訪問…なるほど、「しゅうかつ」とやらを行うには様々な段階を経る必要があるそうだ。たしかにそれは一理ある。「ドラクエモンスターズ」でもいきなりは強いモンスターは生まれてこない。徐々に強くしていくしかないのだ。



「何を当たり前のことを。」



甲高い声の女言うことは、ひどく当たり前に、そして空虚に聞こえた。「ドラクエモンスターズ・世界8位」の自負のある三代目にとって、この女から得るものは何一つないように思えた。





というか、ミニスカートが気になって話など聞いていなかった。





「ドラクエモンスターズ・世界8位」の男は「足フェチ」でもあったのだ。







「次は君達の一個上の先輩をお呼びしていまーす。」



ミニスカートはそう言って壇上に男を招き寄せる。男はやけに誇らしげな表情でマイクを持ち、軽くジョークを飛ばしつつ自己紹介をした。男のジョークに会場は笑いに包まれた。





…ナニガオモシロインダ?





三代目は心でそう囁くと同時に左耳の機能を停止させた。






壇上の男はこう続ける。



「まあ、僕は皆さんもご存知の○○って企業から内定をいただいたのですけど…僕、とある特技がありまして、それは『人の心が読める』んです。面接でも、そんな話をしましてね。結構ウケが良かったですよ。」








じゃあ、今の俺の心を読んでみろ






三代目は心でそう叫ぶと同時に右耳の機能を停止させた。





唯一機能している目は、ただ呆然とミニスカートの方を向いていた。――「大人達は心を捨てろ捨てろと言うが、俺は嫌なのさ。」、一瞬どこだかの歌手が歌っていた歌のフレーズが脳裏をかすめた。



就活ノートはその日も白紙のままであった。



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何もこんなテストの時期に長文のシリーズを始めなくても良かったな…と思っています。根っからのアマノジャクです。

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ここに一冊のノートがある。



その表紙にはやけにか弱い文字で、こう記されている。




「就活ノート」





さて、そろそろ話そうか。





「2ダブリ大学生・ギリギリ就活奮闘記」



第一話 「そうだ、就活をしよう。」







――話は2005年の10月5日に戻る。



男はいつも通りの朝を迎えていた。テレビをつけるといつも通りにグラサンの司会者が何かを話している。この数年間、男にとっての「朝」とは、まさにその光景に他ならなかった。


頭が痛い。昨日は飲みすぎた。「自分よりモテない」と信じて疑わなかった友人にかわいい彼女が出来たのだ。大いなる敗北感ゆえか、明らかに悪い酒の飲み方だった。


左手も痛い。これは、ご祝儀代わりとスタンハンセン直伝のウェスタンラリアットを見舞ったせいであろう。


とにかく遊び相手がひとり減ったことは確かだった。



「さて、今日は何をしようか…。」



いつもなら奴に連絡するところだが…。今はもう…そう、奴には大塚愛似の相方がいるのだ。


「もういっかい!!」、きっと奴らは夜な夜なそんな掛け声を掛け合っているのだろう。干からびてしまえばいい。



しかたなく男は、黒く細長い機械の箱に手をかける。野球ゲームのペナントモードがもう少しで終るのだ。


ゲームを終らせることに意味はない。1年のペナントが終ったら、また次の1年のペナントが始まるだけだからだ。


終わりなき漫然とした作業の繰り返し。それはまさに男の日常を鏡に写したかのようだった。


4番打者の打率7割。ちょうど男の大学欠席率くらいだったろうか。



さすがにそれはないか…少し考えたが、すぐにやめた。そんなことは大した問題ではないのだ。





―その時、


ふと、昨日の飲み会での会話が断片的に男の脳裏をよぎった。








「おっぱい! おっぱい!」




違う。それではない。










「もう、就活だよなー。お前、何かやってる? 俺は夏にインターン行ってきたぜ。」




そう、それだ。






インターン? 何だそれ、うまいのか?


夏? 夏か…東北あたりを放浪していたな。あとはパワプロ。


しゅうかつ、か…。




男は、昨晩買っておいて飲み切れなかったペットボトルのお茶を飲み干すと、小さくこう呟いた。




「そうだ、就活をしよう。」





痛みの残った左手をくるくると回すと、男はすぐさま家を出た。





行く先は文房具屋だった。




いつからだろうか、


男が生活をする上で、ノートやペンはまるで無用な存在と化していたのだ。





「就活ノート」




何ヶ月かぶりにペンを握った男の指は小刻みに震えていた。





男の名は「三代目」としようか。当時23歳。



2ダブリ大学生のギリギリな就職活動がその時より始まった。




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新シリーズです。いつ終るやら…。


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